社長の呟き 2021年6月号 「澁澤の青天」

日本橋倶楽部会報6月号(第501号)

【六月号】

「澁澤の青天」

 

NHK大河ドラマ「青天を衝け」は深谷の藍玉の製造販売をする農家に生まれた澁澤榮一が一橋慶喜に仕官し、激動の江戸末期にパリ万博随行で得た見識を下に明治日本の近代化に活躍していく姿を描く。第一国立銀行を始め約五百の会社や団体の創立に関わった榮一は後に”日本資本主義の父”と呼ばれることになるが、「榮一、近衛篤麿等ト共ニ社交機関タル日本倶楽部ヲ創立セント謀リ、是日、貴族院議長官舎ニ於テ発起人会開カレ、榮一副会長ニ選バル。」(澁澤榮一伝記資料)、「日本橋倶楽部員大倉喜八郎ら其他の諸君発起と為り、青渊先生並に令夫人を主賓とし、十四日午後六時より日本橋倶楽部に於て送別会を開きたり」(竜門雑誌 明治42年9月)などと当倶楽部との関係も深い。彼が立ち上げた地元深谷の「日本煉瓦製造」は東京駅、日本銀行、銀座街区などの建設に大いに貢献した。また藍栽培が盛んであった深谷では、藍の暴落を機に葱の栽培に着手し、ついに生産量日本一となった。葱を”あお”とも呼ばれることから、故事「”あお”は藍より出でて藍より青し」は翁の深谷との因縁を言い得て妙である。日銀近くの国指定史跡「常磐橋」の修復が五月に完了した。同公園内のステッキ姿のブロンズ像は自詠の漢詩”青天を衝く”が如くコロナ禍の令和を応援しているようだ。 小堺