社長の呟き 2020年12月号「師・士走」

日本橋倶楽部会報12月号(第495号)

【十二月号】

「師・士走」

「昔は年の暮れにも祖先の霊を弔う経をあげたため、僧が慌ただしく馳せる『師馳す(しはす)』から転じて十二月を『師走』」と七年前の小欄に書き込んだ。しかし今年ほど毎月、医師、看護師、薬剤師の三“師”を息切れさせるほどに“走”らせた年はあるまい。(女性を看護婦、男性を看護士と呼んでいたが、2002年の法改正から男女ともに看護師に) 彼等は自らの生命の危険を賭して医療現場に立ち続け、また救急救命“士”はどれだけ走り回らされてきたことか。“師”は免許、“士”は資格が必要とされる職種と分類されるそうだが、 “死”と向かい合う状況の中、分け隔てなく協調し闘ってきた。COVID19は突然現れ、人類を死の恐怖の淵にまで追い込んでしまったが、元と言えば彼等を増長させたのは他のウィルスを科学的に駆逐し続けてきた我々人類の科でもある。それをくい止める為には飛沫感染を避けるという原始的な方法しか残されていないという因果応報の戒めに人類らしく生きるための会話、集う、接触の楽しみを奪い取られてしまうという皮肉。願わくは新年が “師”と“士”がゆっくり歩けるように安らかなることを!どうか佳い年をお迎え下さい。  小堺