安藤優一郎氏の江戸歳時記が更新されました。

2022.08 江戸の菓子②【和菓子の日となった嘉祥の日】

江戸時代は、菓子が主役の儀式が江戸城で毎年二度執り行われました。嘉祥の儀式と玄猪の儀式ですが、6月16日に執り行われた嘉祥の儀式からみていきましょう。この日、江戸在府中の諸大名は江戸城に登城することが義務付けられていました。

嘉祥の儀式とは疫気を払うため16個のお菓子を神に供え、その後神棚から下ろして食する行事のことです。平安時代にはじまる宮中の行事でしたが、幕府は将軍から下賜された菓子を食べれば疫気が払えるとして、諸大名を対象に執り行う江戸城の年中行事に組み入れてしまいます。

当日、諸大名は江戸城に登城し、将軍から菓子を下賜されました。会場は城内で最も広い空間・大広間です。将軍手づから諸大名に渡すのが原則で、2代将軍秀忠の頃までは大名一人一人に手渡しました。そのため、以後2~3日ほど将軍は肩が痛かったと伝えられます。

将軍が下賜した菓子は饅頭、羊羹などで、総数2万個以上にも達しました。そうした由緒を踏まえ、現在では毎年6月16日が全国和菓子協会により和菓子の日に設定されています。