ふるさと食文化の旅:栃木

栃木

栃木県は関東平野の北部を占める平野部と、日光・那須などの山地からなり、海に面する地域のない内陸部である。八溝山地は茨城県との県境になっている。内陸部であるため、朝晩や夏冬の気温差は大きい。中禅寺湖・那珂川・鬼怒川・渡良瀬川で漁獲される川魚はこの地域の食生活に定着し、重要なたんぱく質の供給源となっている。

郷土料理

魚

中禅寺湖・那珂川・鬼怒川などでは、ヒメマス・イワナ・ヤマメ・アユ・ニジマス・ウグイ・コイなどが漁獲される。ニジマス・ヒメマス・アユの養殖も行われている。

コイを筒切りにし味噌・醤油・酒で煮込んだ「コイの野洲焼き」「フナの甘露煮」「フナの丸揚げ」ニジマスを使った「マスずし」(馴れずし)などの川魚料理がある。

肉

那須高原を中心に「とちぎ和牛」「那須高原牛」や乳牛が飼育されている。生乳の生産量が全国では上位にある。この地区の牛にはストレスを与えない飼育法が行われている。

ブランド豚には「とちぎLaLaポーク」「赤城ポーク」などがある。脂肪は適度に白く、肉色は淡灰紅色できめの細かいのが特徴である。

野菜

名産のかんぴょうは、約290年前大名が領地を変えるときに、近江藩から持ち込んだといわれている。乾燥した気候の壬生町がかんぴょうの乾燥に適していたので、生産地となった。

那須烏山市周辺では「山中かぼちゃ」が生産されている。曲がりネギの種類の「新里ネギ」(宇都宮市)・「宮ネギ」(栃木市)が栽培されている。コメの生産量の少ないこの地区では茹でたサトイモを串にさして味噌ダレをつけて、コメの代用として食べる習慣があった。

果樹では、ナシの栽培が多い。品種は、「幸水」「豊水」が主力であるが、栃木県独自の品種「にっこり」も開発されている。

伝統料理

貴重な海産魚の利用

代表的な伝統料理の「しもつかれ」は「すむつかれ」「しみつかれ」ともいわれている。正月の残りものの塩ザケの頭・節分の炒り豆・鬼おろし器で粗くおろしたダイコン・ニンジン・油揚げ・コンブ・酒粕を大鍋に入れて、醤油・味噌・砂糖で調味して煮込んだもので、2月の初午の日に、赤飯とともに藁苞に入れて、稲荷神社に供え、家族で食べる。語源は、強烈な刺激性の酢の匂いから、「すむつかり」にあるということが、江戸時代の「嬉遊笑覧」に記載されている。

行事食

納豆餅は栄養のバランスがよい

12月24日は「納豆ねせ」といい、納豆を仕込み4日目の納豆で、納豆餅を作る習慣があった。

栃木県葛生町の正月料理には「耳うどん」を食べる。耳の形のうどんを鬼の耳に想定して、鬼を食べてしまえば、その年は悪いことは起こらないという願いからの料理らしい。

日光は、京都と並ぶ湯波(湯葉)の産地である。古くから煮物・佃煮・吸い物の具に使われている。客には「湯葉料理」でもてなす家庭もある。

食のこぼれ話

落人料理とは…

栃木県の湯西川一帯の料理のようである。この地域は、平家の落人が隠れ住んだところといわれている。

落人料理は、山女魚などの川魚を串にさして焼いたもの、鹿や熊肉の刺身、山鳥の肉や山菜鍋などをさし、囲炉裏を囲みながら食べる野趣の溢れる料理といえる。