島根
島根県建国の神話によれば、大和朝廷は天照大神を祀る出雲大社を島根県簸川郡に建てたとなっている。出雲大社は、日本唯一の縁結びの神社と信じられている。「出雲」の名の由来は、『出雲風土記』によると「八雲立つ出雲の国」、すなわち「雲のよくでる国」の意味である。県庁所在地の松江は、松平藩の城下町であった。7代目藩主松平治郷(不昧公)は茶人として知られている。そこで茶会に必要な和菓子づくりが盛んになった。現在も、松江では独特の和菓子が作られている。
島根県は日本海に面し、沖合は寒流と暖流が交わる好漁場である。陸地の地形は山が多く、沿岸まで近づいている。山地から流れる斐伊川は、下流に出雲平野・松江平野を形成している。島根半島の基部には中海や宍道湖があり、隠岐諸島も含まれる。松江藩は斐伊川を中心に用水路を開発し、舟運を盛んにした。
気候は秋から冬にかけて曇りや雨の日が多く、季節風が強い。県の東部は冬の日照時間が短く、降水量は多い。西部は夏の雨の量は少ない。
郷土料理
邑智郡で飼育している「石見ポーク」は、脂身があっさりして甘味があるのが特徴である。
島根県の出雲そばは「割り子そば」ともいわれ、奥出雲の焼山地方でとれるソバを甘皮と一緒に挽いて、甘皮に含まれる香味を引き出したものである。麺は黒いソバである。丸い小さな朱塗りの割り子という器に、少量の茹でて冷やしたそばを載せる。割り子を3枚~5枚重ね、いろいろな薬味で食べる。
伝統料理
芋煮
津和野に古くから伝えられている芋煮は、東北地方に伝わる「芋煮会」とサトイモを使うのは同じだが、肉の代わりに魚を使うところが違う。日本海の魚介類を使うのが、地域性のある郷土料理と思われる。小粒の「笹山のサトイモ」を弱火で気長に煮含める。この時、炙った小鯛の身肉をほぐして一緒に煮込む。味付けは、食塩・淡口醤油・味醂で整える。大鍋で作った芋煮を大勢で食べるところに意味がある。
行事食
正月料理と雑煮
島根県の正月の祝い膳として、数の子・田作り・黒豆・煮しめ(サトイモ・ゴボウ・ダイコン・コンニャク・昆布など)・蒲鉾を用意するのは、関東との違いはない。雑煮については、県内でも地域により違いがある。津和野町の雑煮は、カブと餅の取り合わせだけの素朴な雑煮が基本である。ただし、客のもてなしには年魚といわれるアユを縁起物として使う。
スズキの奉書焼と松江の食文化
江戸後期の松江藩主には、松平宗衍(南海)・治郷(不昧)親子二代の食を好む殿様がいた。今日の松江の食文化は、この二人の影響が大きかった。昔、漁師が熱灰の上で魚を焼いて食べているのを見た不昧公が所望したところ、灰のついたまま差し出すのはあまりに恐れ多いと、奉書に包み蒸し焼きにしたのを献上し、大変喜ばれたというのがスズキの奉書焼の始まりだという。これがあまりに美味しかったので、松江藩の「お止め料理」となり、明治維新まで庶民は口に出来なかった。