ふるさと食文化の旅:滋賀

滋賀

滋賀県は海に面している地域ではないが、日本一広い琵琶湖を擁しており、県の約6分の1を占めている。琵琶湖は産業や県民性にも影響している。琵琶湖沿岸の湖北・湖東・湖西・湖南には平野が開けている。江戸時代には、京都・大阪(もとは大坂)に通じる交通の要衝として、宿場町や琵琶湖の水運が栄えていた。

県の南東部は、古くから東海道・中山道・北国などの街道が通じる。近江地方は京都に近いこともあり、情報が集まり近江商人の発達したところでもある。天秤棒一本で行商に成功した近江商人のたくましい気質は人生の教訓をともなっているほどである。

郷土料理

魚

日本のすしの原形といわれている「フナずし」は、琵琶湖固有の子もちのニゴロブナを原料とし、塩漬けの後にご飯を重ねて詰め、乳酸醗酵させているものである。正月には欠かせない伝統食品であり、1300年以上もの伝統がある「生馴れずし」の一種である。

琵琶湖特有のコアユは、郷土料理の佃煮に作られる。琵琶湖に生息する小魚は、滋賀県の郷土料理の佃煮の原料となっている。

大津市内を流れる瀬田川で捕獲される「セタシジミ」は縄文時代から利用されていた。今でもシジミご飯の美味しさはよく知られている。

肉

「近江牛」は但馬の和牛を近江で育てた赤色系の牛肉で、「松阪牛」「神戸牛」と並んで肉質のよいことで定評がある。江戸時代前期の元禄年間(1688~1704)に、江洲(滋賀)の彦根藩邸では薬喰として牛肉を利用したといわれている。

鶏では「近江しゃも」というブランド鶏がある。

野菜

よく知られている滋賀県の伝統野菜には、「日野菜」がある。発祥は室町時代である。カブの一種で、根の部分の上が紫、下が白色で漬物に使われている。甲賀市の「鮎川菜(アブラナ科)」「杉谷なすび」「杉谷とうがらし」蒲生郡の「足太あわび茸」湖南市の「下田なす」などの野菜類がある。

古くから伝わっているものに「水源寺こんにゃく」がある。東近江市の古殺・水源寺に室町時代から伝わるものである。

伝統料理

琵琶湖のコアユ料理

滋賀県は琵琶湖の魚介類を利用した伝統料理が多い。琵琶湖には、アユ・フナ・コイ・モロコ・ビワマス・ハス・イサザ・ウナギ・その他の魚介類などが生息している。代表的なアユは、遺跡から縄文人も琵琶湖のアユを食べていたと考えられている。コアユを氷魚と呼び、この氷魚を塩と酒を入れた湯でゆがいた「釡あげ」がある。コアユは、山椒煮・佃煮・甘露煮・飴煮などにして保存食としている。生きているアユを串に刺し、塩焼きしたものはタデ酢で食べる。

行事食

琵琶湖の正月料理

神饌に用いられる代表的な琵琶湖の魚はコイが多い。生きたまま目玉を紙で塞ぎ、頭から尾へ麻の苧(アサの繊維を編んだ糸のようなもの)を掛けて飛び跳ねたように体を反らせた状態で供えられる。
正月には、尾頭つきの魚の焼き物・田作り・たたきごぼう・黒豆・コンニャクの煮しめなどが用意され、雑煮は頭芋の入った味噌仕立てのところが多い。

食のこぼれ話

源五郎ふなずし

琵琶湖の馴れずしで、日本のすしのルーツといわれている。琵琶湖の源五郎フナは、大型のヒラブナである。名前の由来は、室町時代のフナとり名人・錦織源五郎という漁師の名から付けたといわれている。

春にとったフナの内臓を除き塩漬けしたフナをご飯と一緒に重石を載せて漬け込み、乳酸醗酵と熟成を進めて押しずしにする。乳酸醗酵により酸味が強く感じるが、この匂いがチーズのようで美味しいと評価する人もいる。翌年の正月に食べるために作る。