ふるさと食文化の旅:埼玉

埼玉

埼玉県は関東地方中央部に位置する内陸県である。西部は秩父山地、東部は関東平野が広がっていて、都心のいろいろな情報の影響を受けやすい位置にある。平野は関東ローム層に覆われた丘陵や台地と、利根川・荒川などの流域は低地が広がっている。川越が位置する中央部の火山灰台地は、宝暦元年(1751)に千葉県からサツマイモの種芋を持ってきて栽培を開始した。

郷土料理

魚

利根川で漁獲したウナギは、蒲焼きにして利用している。浦和のウナギの蒲焼きが有名になったのは、大正12年(1923)の関東大震災以降である。三郷・越谷のウナギは「地サジ」といわれている。ウナギの頭がサジの形に似ているからである。

コイ料理・ナマズ料理も盛んである。刺身のつまに必要な「ハマボウフウ」は、川口市で栽培されている。

肉

埼玉県の「深谷牛」は、ネギの産地深谷で生まれたもので、肉質はキメが細かく、風味豊である。天然記念物のヨークシャー種のもつ純白な脂肪と、きめの細やかさの肉質の「幻の豚 古代豚」がある。黒豚では「彩の国黒豚」「花園黒豚」がある。

野菜

山間部の大滝村(現、秩父市)特産の「中津川いも」は、コメがとれない地域の主食として利用された。上尾市や北本市の「埼玉青ナス」は明治時代から栽培が始まった丸ナスである。夏には、冷たいうどんの「冷汁うどん」を食べる。

伝統料理

うどん料理は客のもてなし

来客があるとうどんを提供する習慣がある。その代表的なものに、うどんと野菜をたっぷり入れた「おっきりこみ」がある。これは冬に食べる。夏は「冷汁うどん」を食べる。

レンコンを使った「はすよごし」や「ずいきの煮つけ」「さつまいも団子」小麦粉を使った「いがまんじゅう」などの料理で客をもてなす習慣がある。

行事食

夜祭は「煮込みうどん」を

12月2、3日の両日に行われる「秩父夜祭」は、農産物の収穫を祝う祭りである。寒い祭りの後に芯から温まる料理として「煮込みうどん」がある。

大晦日の晩には、白い飯に丸干を焼き、おひら(塗りの浅い椀にダイコン・ゴボウなどの煮つけ)を用意し、これに酒も添える。

夏には「冷汁うどん」といい、氷が入った冷たいうどんを食べる。冬には、うどん状の麺と野菜をたくさん入れた汁物が用意される。

食のこぼれ話

五家宝の話

五箇棒(五嘉宝とも書く)は、埼玉県と群馬県にまたがる素朴な郷土菓子である。江戸中期の享保年間(1716~1736)に、上州(群馬)五箇村が干飯を棒状に伸ばし、黄な粉をまぶして菓子を作り、五箇棒と称したのが始まりといわれている。

文化年間(1804~1818)に武州(埼玉県)の鳥海亀吉という人が再現して、熊谷の名物にしたといわれている。熊谷の五家(5軒)の農家が協力して作ったという説のもある。