ふるさと食文化の旅:新潟

新潟

新潟県は本州の中北部に位置し、沿岸部は日本海に面し、日本海に浮かぶ佐渡島と粟島も新潟県に属する。小さな粟島でのアウトドアの加熱料理法には、鍋に熱した石を入れて食材を煮るという独特の調理文化があるので、アウトドア愛好家に人気がある。米どころ新潟には大きな河川の流域に越後平野や高田平野が広がり、新潟のブランド米「こしひかり」の生産地となっている。山間部は最深部で250cmを超える世界でも有数の豪雪地帯であるが、雪解け時期になると水田の重要な水源となる。

郷土料理

魚

新潟の三面川でのサケの孵化事業は、村上藩により江戸時代から行われていた。現在でも三面川の塩ざけ(塩引き)は、新潟の正月には欠かせない食材となっている。村上の塩引きは、三面川で水揚げしたサケを腹開きし、塩をたっぷり塗って、ムシロに1週間ほど包んで保存する。1週間後には、十分に水洗いする。この手順を何回か繰り返してから、形を整え、屋内で頭を下にして吊るし、長い日数をかけてじっくりと熟成と乾燥をして仕上げる。翌年の夏ごろには乾燥して硬くなる。

肉

新潟県産の代表的な銘柄牛「にいがた和牛 村上牛」は、村上市またはその近郊で飼育している黒毛和種である。脂身は甘く、豊かな風味でとろけるような味わいがある。18種もの銘柄豚が飼育されている中で、代表的な「妻有ポーク」は十日町市近郊で飼育されている。新潟県で生産されている「にいがた地鶏」という銘柄鶏は、天然記念物として指定されている県在来の「蜀鶏」をもとに開発された。

野菜

新潟県の中でも長岡市では、野菜ブランドの認定を行い、伝統野菜の普及に努めている。とくに、ナスの種類は多く「十全」「魚沼巾着」「鉛筆ナス」「中島(長岡)巾着」「久保ナス」「越の丸」などがある。枝豆の黒崎茶豆は季節になると関東でも流通するようになっている。

新潟には、伝統野菜として「女池菜」「長岡菜」「大崎菜」などの葉物がある。これらのほとんどは塩漬けとして利用されているが、古くなった漬菜は、酒粕とともに煮る「煮菜」として日常の惣菜にしている。最近はこれら伝統野菜の栽培面積が減少している。

伝統料理

夏には川原や海辺で魚の味噌焼、正月には塩引き料理

夏の佐渡には、川原で石を熱し、この上に味噌の土手を作り、その土手の内側でアユを焼き、身肉を自然の中で美味しく味わう伝統的アユの食べ方がある。新潟県北部の日本海に浮かぶ粟島では、同じく石の上に味噌の土手を作り、海産物を焼いて賞味するという伝統的食べ方がある。

新潟の村上市を流れる三面川に遡上したサケに、塩を施し低温で長い日数をかけて乾燥した塩引きがある。塩引きをさらに硬くなるまで乾燥し、薄くスライスしたものを日本酒に浸し軟らかくして食べる「酒びたし」は、新潟の伝統的な酒のつまみである。

行事食

祝い事には白餅と塩引きが食材として

行事や祭りの料理には白餅が利用される。春秋の彼岸には「おはぎ」、月遅れの端午の節句には笹団子、三角粽などをつる。正月の年取り魚は、三面川で獲れたサケの塩ザケ(塩引き)で、雑煮の具として使われる。正月ばかりでなく、祝い事があればサトイモ・コンニャク・干しシイタケとともに塩引きの切り身を入れて煮たもので、最後にかたくり粉を加えて濃厚に仕上げる。濃平、濃餅と書くことから「のっぺい」と名のついた「のっぺい汁」を作る。

食のこぼれ話

サケのアスタキサンチン

サケは北洋海域で成長している間に、エビやカニを餌としている。もともとサケの筋肉は白身肉であるが、赤みがかっているのは、エビやカニに存在しているアスタキサンチンが蓄積するからである。カツオやマグロなどの赤身肉の色素はミオグロビンという鉄を含む色素たんぱく質であるが、サケの赤色は抗酸化作用を持つアスタキサンチンに由来する色素である。