ふるさと食文化の旅:長崎

長崎

長崎県は九州西部の端に位置し、日本海・東シナ海に面する半島部と島嶼部からなり、山地・急傾斜地が多い。海岸はリアス式海岸であり、陸海ともに複雑な地形をしている。島嶼部は県域の45%も占め、対馬・壱岐から五島列島まで約600もの島々がある。五島列島の五島うどんは、小豆島から移住した人によって伝えられ、それが五島列島の気候風土により良質なうどんが出来上がったという経緯がある。海から15km以上離れた地域はなく、対馬暖流の影響で温暖であるが、降雨量が多い。
古くからオランダや中国の文化が日本に入る海外との交流の窓口として重要な地域であった。オランダ文化の影響を受けたカステラ、中国の文化の影響を受けた卓袱料理などが有名である。

郷土料理

魚

屈指の水産県といわれている。複雑な海岸線、対馬暖流はサバ・アジ・イサキ・サワラ・タイ・マグロ・イワシ・スルメイカの好漁場でもある。ときに長崎のイサキは「値賀咲」のブランド名で知られている。ブリ・マダイ・長崎トラフグ・ヒラメなどの養殖が盛んである。
水産加工品では、ウニの塩辛・野母の「カラスミ」は高級珍味として知られている。
ブランド魚介類には「旬さば」(五島海峡でとれるマサバ)・「小長井カキ」(諫早湾のカキ)・「ごんあじ」(五島灘のマアジ)・「値賀咲」(イサキ)がある。

肉

銘柄牛には「長崎牛・出島ばらいろ」「平戸牛」「壱岐牛」がある。「出島ばらいろ」は、長崎市内の農家が飼育している黒毛和種。肉の赤身と霜降りのバランスがよく、黒毛和牛本来のうま味が強調されている。バラ肉は焼肉に適し、バラの花のイメージがあることから「出島ばらいろ」の名がある。「平戸牛」は1200年以上も前から飼育している黒毛和種で、歴史のある和牛である。「壱岐牛」は玄界灘に浮かぶ壱岐島で飼育されている黒毛和種である。ストレスのない環境で飼育されていて、とろけるような柔らかさの肉質である。

野菜

伝統野菜の中で長崎ハクサイは「唐人菜」といわれ、長崎周辺で江戸時代から栽培されていたもので、漬物・鍋物・雑煮の具に使われる。「長崎赤ダイコン」は節分や祝いの日に煮物にして食べる。
ブランド野菜には「雲仙こぶ高菜」(高菜)・「ダイヤとまと」(品種は桃太郎)・「黒田五寸人参」「愛の小町」(ジャガイモ)などがある。
果物では「茂木びわ」が知られているが、「長崎びわ」も古くから栽培されている。「温州みかん」「長崎さちのか」(イチゴ)・「アールスメロン爽潤果」などのブランド果実もある。

伝統料理

武士が戦場で食べた「大村ずし」

大村湾で漁獲された新鮮な魚介類・野菜類・タケノコ・カンピョウなどが豊富に入手できたので、箱型のすし桶にすし飯と魚介類や野菜類の具を三段に重ねて作る押しずしの一種。
室町時代後期の16代藩主・大村純伊の頃に、飯の上に具をのせ箱に詰めた飯を戦場に持って行き、武士たちが脇差しで四角に切りながら食べたことに由来すると伝わっている。現在は、祭りや祝いのときに押しずしのような形で供される。百貨店の物産展でも見かける。

行事食

長崎の正月料理

長崎地方の正月料理には、出世魚で知られているブリが欠かせない。かつては、五島列島の沖でブリを塩ブリにし、歳暮用に使った。贈られた塩ブリは雑煮に入れた。また、正月にはイワシを食べると金が出るといわれ必ず食べた。長崎で欠かせない魚にアゴ(トビウオ)がある。とくに、焼いて干した「焼きアゴ」は雑煮のだしの材料として使う。

食のこぼれ話

野母のカラスミ

江戸時代から長崎県の野母のカラスミは、越前のウニ(塩辛)・尾張のコノワタと並んで、天下の三大珍味といわれ、貴重な食べ物であった。
カラスミの食べ方はいろいろあるが、軽く炙って食べるか、スライスしたダイコンで挟んで食べるのが普通である。ところが、おろし器でおろしたカラスミを刺身につけて食べるという贅沢な食べ方もある。芝浦のインターコンチネンタル東京ベイにある「分とく山」の料理長が、特別に食べさせてくれた調味料の一種であった。