ふるさと食文化の旅:熊本

熊本

熊本県の大半は山地が多く、東部には阿蘇山と世界に誇る広大なカルデラがあり、南部には球磨川に沿って人吉盆地・八代平野がある。西岸は宇土半島が突き出し、その先には天草諸島がある。気候は太平洋側気候に属し比較的温暖であるが、冬と夏の寒暑の温度差が大きい。熊本の地名は、曲がりくねった道や川を意味する「曲処」に由来するといわれ、地形は複雑である。古くからスイカの栽培が盛んで、生産量は全国の15%を占めている。トマトの生産量も全国の12%も占めており、生産量は多い。加藤清正は、白川・菊池川・球磨川などの主な河川の治水工事・灌漑水路開設・海岸部の干拓を行い、広大な新田の開発という業績を残している。

郷土料理

魚

漁業は天草諸島の入り江を利用した養殖が中心である。トラフグ・マダイ・クルマエビ・ノリ・真珠などが養殖されている。一般の漁業は低調で、わずかにハマグリ・アサリ・マダイ・タチウオ・コノシロ・キビナゴ・タコが水揚げされる。

ブランド魚には「球磨川の尺鮎」(30cm以上の鮎)・「天草のクルマエビ」(養殖)・「大矢野黄金のハモ」「天草天領イワガキ」(天草)などがある。天草の海はアワビ・ウニ・マダイなど海の幸には不自由しない。春から夏にかけてキビナゴが漁獲される。汁を少なくしたキビナゴ鍋は天草の郷土料理である。

肉

「えこめ牛」は、熊本県の菊池地方のコメ(菊池米)を飼料として育てた牛で、良質の肉に仕上げている。環境に優しい飼育(=エコ)と、コメを飼料にして飼育している(=コメ)の両者の名をとって「えこめ」の名がある。

天草の地鶏の「天草大王」は、明治時代から大正時代にかけて水炊き用地鶏として珍重されていた地鶏が消滅したので、1992年から10年間かけて復元した品種である。天草でとれる小魚や海藻で飼育している地鶏である。

「天草梅肉ポーク」は、梅肉エキスを混ぜた飼料で飼育した豚で、肉質は柔らかく脂はさっぱりしている。また、熊本は馬肉の産地として有名である。

野菜

温暖な島嶼や冷涼な山地では、露地栽培やハウス栽培によりトマト・ナス・キュウリ・キャベツ・ダイコン、イチゴ・スイカなどを収穫している。ブランド野菜には「阿蘇なす ひさごむらさき」(伝統野菜の赤なすの改良したもの)・「夏秋トマト」(阿蘇で栽培。夏と秋に最盛期を迎える)・「はちべえトマト 太陽の子セレブ」(八代)・「湯島ダイコン」(有明海に浮かぶ湯島で栽培)・「菊池水田ごぼう」(菊池市)などがある。果物ではデコボン(品種「不知火」のかんきつ類)が人気である。

伝統料理

阿蘇田楽

熊本県は魚介類に恵まれた天草もあるが、一方で阿蘇のように海から遠い山間部もある。山間部での食生活は魚介類や食肉などのたんぱく質が乏しい。阿蘇山麓一帯の農家では、植物性のたんぱく質食品の豆腐を串に刺して味噌を塗りながら焼くという料理が発達した。この地の農家では、冬になると囲炉裏端で串に刺した豆腐・サトイモ・コンニャク・ヤマメなどを焼いてゴマ味噌をつけて田楽を食べるのである。

行事食

人吉の秋祭りの「つぼん汁」

人吉盆地の秋祭りに、豊作を祈って神社に神饌として供える行事食で「つぼ汁」ともいわれる。「つぼ」とは、蓋つきの容器のことで、各家庭には先祖から受け継がれている。祭りにはこの容器に鶏肉やシイタケ・ニンジンなどの根菜類・コンニャク・竹輪・蒲鉾を入れ、醤油仕立ての煮物にして、赤飯と一緒に食べる。

食のこぼれ話

からし蓮根

蓮根の穴にからし味噌を詰めて、衣をつけて揚げたものである。熊本の代表的郷土食品である。

江戸時代初期に、三代目熊本城主・細川忠利は病気がちであった。寛永9年(1632)に、細川家の菩提寺の玄宅寺和尚が、外堀の蓮根で栄養食を考案した。蓮根の切り口が、細川家の家紋の九曜に似ていることから、蓮根の穴に辛子味噌を詰めて茹でたのが、「からし蓮根」が誕生したきっかけといわれている。