鹿児島
鹿児島県は九州の南端に位置し、東側に大隈半島、西側に薩摩半島が南へ向かって突き出ていて、鹿児島湾を形成している。鹿児島湾には桜島が浮かんでいる。大隈半島や薩摩半島の先の南方海上には大隈諸島・トカチ列島・奄美諸島などの島嶼が点在している。鹿児島市内近くは山地が多いが、島嶼地域は魚介類の生息地となっている。黒潮の回遊する海域なので、好漁場がある。鹿児島は、キリスト教伝来の影響や幕末の西郷隆盛などの活躍で独特の文化が発達した。江戸時代には、前田利右衛門が火山灰により形成されたシラス土壌で栽培できるサツマイモの導入をしている。その後、鹿児島は各種サツマイモの栽培が盛んになっている。
郷土料理
キビナゴ料理は、古くから家庭料理として食べられている。さつま揚げには、ハモ・エソ・グチ・アジ・トビウオ・サバ・サメなどのすり身を利用しているが、砂糖・味醂・塩・地酒・豆腐・でんぷんを加える。鹿児島では「つけ揚げ」といい、甘みが強く感じる。鹿児島のカツオ節は、300年余の歴史をもち、「枕崎カツオ節」(本枯れ削り節)が有名である。地元では削り節に味噌やネギを添えて、お茶を注いで味わう「茶節」という食べ方がある。
郷土料理の「薩摩汁」は、鶏肉に桜島ダイコン・人参・ゴボウ・サトイモ・シイタケ・ネギ・こんにゃく・油揚げを入れて煮込み、麦味噌仕立てに作るもので、もともとは薩摩武士の野営の食べ物から発展したらしい。
伝統料理
青縞模様のキビナゴの料理
鹿児島のキビナゴ料理は郷土料理としても知られている。キビナゴはウルメイワシ科の魚で、鹿児島周辺では12月から翌年1月までが旬であり、その刺身は指で骨や頭を除き、開いて皿に並べる。並べた模様が波をよせたようにきれいな模様に見えることから「波のしずく」ともいわれている。生食(すし・刺身)・串焼き・干物でも食べる。ショウガ醤油・ポン酢・酢味噌で食べるのが最も美味しい。
行事食
小正月には「穂垂れ煮しめ」
農家の小正月の夕食は「穂垂れ煮しめ」を用意する。「穂垂れ菜」「穂垂れ汁」ともいわれている。丸ごとの小魚の干物・包丁を入れない野草・ニンジンやゴボウなどの野菜・昆布・コンニャク・長いままの青菜・ノビル・ニラなどを味噌仕立てで煮たもので、柳の枝の皮を削った箸で食べる。煮しめが稲穂のように、柳の枝の皮にかけて長く垂らして食べる。たらふく食べた後は稲が重く実ったことの意味で、横になって休む。
甘い刺身醤油
鹿児島で驚いたのは、刺身醤油の甘いことである。刺身醤油の甘さは九州の各地で経験するらしいが、筆者は鹿児島で経験した。その後、「なぜ甘いのか」を、友人知人に聞いた。結論は、九州の人は客に甘いものを出すことにより、客をもてなしていることを示すという慣わしから始まったのではないかとのことである。