ふるさと食文化の旅:広島

広島

広島県は「安芸の国」といわれている。『古事記』によると「安芸」は「豊潤」を意味し、秋の豊作の「秋」に由来するらしい。平安末期に国司として在任した平清盛は、宮島の厳島神社を修築した。山地から流れる太田川・芦田川から瀬戸内海に栄養分が運ばれる。島々があり、海面は静かで魚の生息に適し、養殖にも適している。全体に山地が多いが、広島平野・福山平野などの平地もあり、芸予諸島も広島に属する。気候は温暖で晴天の日が多く、降水量は少ない。沿岸部の夏は夕凪が有名である。

郷土料理

魚

複雑に入り組んだ海岸線や瀬戸内に浮かぶ島々の島陰を利用した漁業の養殖が盛んである。とくに、カキ・ノリ・ブリ・マダイなどの養殖が盛んである。漁港には、カタクチイワシ・タチウオ・クロダイ・タコ・エビなどが水揚げされる。カキ料理では、鍋の内側に味噌を塗った「土手焼き鍋」がある。カキのうま味を味噌の香りがより一層美味しく仕上げる。山間部ではサメの肉をワニの名で食べる。

肉

銘柄豚の「芸北高原豚」は自家配合の飼料で、北広島町の高原で飼育したものである。肉質は餅のような弾力があり、歯切れもよく柔らかい。

銘柄牛の「神石牛」は、神石高原町で飼育している黒毛和種で、ロースの肉質はステーキに向いている霜降りで、細かい筋線維と均等に入ったサシが特徴である。

野菜

広島県の伝統野菜には「広島菜」がある。江戸時代の武将の福島正則(1561~1624)が安芸広島城主の時、参勤交代に同行した安芸の国の観音村住人が、江戸からの帰途、京都本願寺に参詣した。その折に「広島菜」の原種となる種子を譲り受けたという説が残っている。ハクサイとカブの中間的な性質をもった不結球の菜である。「観音ネギ」は京都の九条ネギの種子を持ち込んだものである。「広島オクラ」「矢賀チシャ」「深川早生芋」なども伝統野菜である。

郷土料理の「お好み焼き(広島焼き)」は、キャベツやネギを沢山使っている。戦前の一銭洋食が原形で、これに第二次大戦後に利用されるようになったさまざまな食材を組み合わせたものといえる。

伝統料理

カキ料理

広島県は瀬戸内海に浮かぶ島々の複雑に入り組んだ海岸や島陰を利用した養殖業が盛んである。広島県のマガキの養殖は、1500年代から行われていた。したがって、マガキが伝統料理の材料として使われていたのは当然である。漁期は10月から翌年4月であるが、最も美味しいのは12月~2月である。特徴は、小粒でコクがあることである。吸い物・から焼き・酒蒸し・フライ・バター焼き・雑炊・土手鍋などの料理がある。

行事食

タイめん

福山・尾道地方の祝い膳には、「タイめん(鯛麺)」が供される。タイ(鯛)は、「めでたい」、そうめんは「細く長く」の意味があり、「タイめん」は「目出度い縁が何時までも続くことを祈る」祝い料理である。大皿に盛りつけ、すしや郷土料理の具だくさんの「八寸」とともに結婚式の披露宴、棟上などの祝い膳に供される。八寸の食材には、レンコン・タケノコ・ニンジン・サヤエンドウ・ゴボウ・ダイコン・干ししいたけ・凍り豆腐・コンニャクなどと、海の幸が使われる。

食のこぼれ話

もみじ饅頭

広島名物の「もみじ饅頭」は、カステラ生地で餡を包み紅葉の葉の形にした人形焼きのようなものである。

明治40年(1904)に、紅葉の名所である紅葉谷を訪れた伊藤博文が茶店の子の手を見て、「紅葉のように可愛い。焼いて食べたいね。」といったことから「もみじ饅頭」の名がついたという説もある。