ふるさと食文化の旅:岐阜

岐阜

岐阜県は中部地方の内陸県で、海の幸には恵まれにくい地域であるが、冬には富山湾で漁獲されたブリが「塩ブリ」の形で飛騨高山への「ブリ街道」を経て運ばれる。これが、飛騨高山の正月の祝い魚として利用されている。また、岐阜県南西端の伊吹・鈴鹿両山地に挟まれた小さな盆地の「関が原」は、戦国時代の軍事・交通上の重要な地域であった。食文化の上では関西と関東のうどんの汁の味付けが異なる地域といわれている。天下分け目の「関が原」は、味付けの「分け目」の地域といわれた。とくに高山は、豊臣時代の領主「金森長近」が京都を模して作った町で、風情のある街並みが保存され「曳き山祭り」「朝市」などのイベントが古くから続いていて、観光客には人気の町である。

飛騨山脈や飛騨高地は降雪量が多いが、長良川・木曽川・揖斐川の流れる濃尾平野は比較的温暖で、降雪量も少ない。伝統野菜や川魚を特徴とした食文化が続いている。

郷土料理

魚

内陸県の魚食文化の特徴は、富山県氷見港から運ばれた「塩ブリ」が、正月の祝い魚として利用されていることである。毎年12月に富山から届いた「越中ブリ」は問屋で取引され、「飛騨ブリ」の名で信州方面へも運ばれる。「塩ブリ」は保存食として貴重であり、切り身は串に刺して炭火焼が最高に美味しいようである。正月にはブリのアラを利用した「ぶりなます」などもある。

岐阜県を流れる長良川は、アユの鵜飼で代表されるように、かずかずのアユ料理がある。塩焼き・姿ずし・甘露煮などがある。平野部を流れる河川ではアナゴ・ニジマスの養殖が行われている。

肉

飛騨高山の「飛騨牛」は、きめ細かな霜降りがうま味と柔らかみを感じさせ、滑らかな食感が人気である。肉色は鮮やかで、無駄な脂肪がつきすぎていない。この牛の系統は、大切に保存されていることで知られている。「飛騨牛」については、飛騨牛銘柄推進協議会で厳しく格付けされている。この肉の美味しさについては万人の認めているところである。

野菜

飛騨・美濃地方の伝統野菜には、「守口ダイコン」「飛騨紅カブ」「種蔵紅カブ」などがある。1メートル以上も長い「守口ダイコン」は奈良漬けとして市販されていることで知られている。「飛騨のカブ」は、赤カブの塩漬けや糠漬けとして利用されている。「徳田ネギ」は、岐南町の特産の飛騨の伝統野菜である。栽培過程では、何度も土をかぶせて白色部を多くし、白色の部から葉先まで食べられる。煮込むとトロトロに柔らかくなり、甘味があるのが特徴である。

伝統料理

長良川のアユ料理は落ちアユが人気

岐阜県を流れる長良川は、アユの鵜飼で代表されるように、かずかずのアユ料理がある。塩焼き・姿ずし・甘露煮などがある。かつては、家庭でも正月用に甘露煮を作ったものである。平野部を流れる河川ではアナゴ・ニジマスが獲れた。今は養殖されているが、これらも塩焼きや味噌漬けとして利用した。

飛騨の伝統野菜の赤カブの漬物は冬の野菜として大切だった。「フナ味噌」「朴葉味噌」「美濃田楽」などの味噌料理は、寒い季節にからだを温める料理であった。「徳田ネギ」は、岐南町の特産の「飛騨の伝統野菜」である。

岐阜独自の郷土料理に「朴葉すし」(飯と具材の間に朴の葉をのせたすし)、「朴葉味噌」(朴の葉に味噌と刻みネギをのせて焼いたもの)など素朴な料理がある。

行事食

正月は豆腐田楽を食べる

岐阜の正月は、自宅で豆腐をつくる。できた豆腐は串に刺して時間をかけて焼く。魚と昆布などの海産物は購入する。正月の年取り魚の「飛騨ブリ」の名は、富山の漁港に水揚げされたブリが富山から飛騨までのいわゆる「ブリ街道」に沿って運ばれたものである。

食のこぼれ話

朴葉味噌

モクレン科の落葉高木の朴の木の葉は、幅が広く長楕円形で柔軟な葉なので、食べ物を包みやすく、「朴葉飯」「朴葉すし」「朴葉餅」に使われる。「朴葉味噌」は、朴の枯葉の上に厚めに味噌を塗りつけ、おろしショウガ・刻みネギ・シイタケ・ミョウガを混ぜて炭火で焼いて、香りを楽しみながら食べる。