ふるさと食文化の旅:愛知

愛知

愛知県は台地状地形が広く、気候が温暖なことから野菜の生産が中心で農業の盛んな地域である。キャベツの栽培は、明治時代中期以降に名古屋周辺で始められ、日清戦争の頃にはトマトの栽培が開始された。トマトケチャップの製造が始まったのは、この頃からである。

愛知県に面する伊勢湾や三河湾には、木曽川・長良川・揖斐川・矢作川などの大きな川が流れ込み、栄養分が豊富な海域である。古くから「桑名のハマグリ」の美味しさが知られている。淡水と海水の入り混じる桑名近くの揖斐川河口がハマグリの生息に適しているからだ。沿岸を黒潮が流れ、気候は温暖であり好漁場も多い。

郷土料理

魚

愛知県内の各漁港のイワシ・シラス・イカナゴ・カレイ・アサリなどの水揚げ量は多い。海苔やウナギの養殖も盛んである。

ウナギの食べ方では「ひつまぶし」がある。関東のウナギの蒲焼きに比べれば、やや固めに焼いたものを、「蒲焼き」「お茶漬け」として、タレと薬味でいろいろな食べ方を楽しむのである。西尾市一色町産の養殖ウナギは、より天然に近い環境で育てた「一色産うなぎ」というブランドウナギとなっている。

肉

愛知県は、鶏やウズラなど鳥類の飼育や鳥の卵の生産の盛んなところである。そのために、愛知県は「養鶏王国」の名もある。とくに「名古屋コーチン」の人気が高く、明治時代の初めに名古屋の在来種の「名古屋」と「中国のパフコーチン種を交配させたもので、正式名は「名古屋種」であり、「名古屋コーチン」は通称である。その後、「褐色レグホン」「ロードハイランド」を交配させて、名古屋種以上に卵の数を産むように改良している。「名古屋コーチン」の卵は「ごんのたまご」のブランド名があり、濃厚なうま味があり、特別な衛生管理のもとで植物性主体の飼料で飼育している。

野菜

愛知県の伝統野菜には「宮重ダイコン」がある。青首系のダイコンのルーツに当たり、江戸時代から栽培されている。明治時代から栽培されている「愛知早生ブキ」は煮物に、「八名丸サトイモ」は煮物・田楽に利用されている。

伝統料理

天むす(おにぎり)の発祥の県

ご飯を使ったお握りにエビの天ぷらをのせた「天むす」の発祥は愛知県である。名古屋の郷土料理の「ボラまんじゅう」は、木曽川の下流で漁獲されるイナ(ボラの幼魚)を使い、このイナの腹部に八丁味噌を詰めて焼いたものである。愛知県は「豆味噌」の発祥の地でもあり、小さい豆を具にした「豆味噌の味噌汁」は、漁村の古くからの料理として受継がれている。愛知の代表的麺の「きしめん」の由来は「紀州麺」「雉(きじ)麺(めん)」にあるといわれている。

行事食

正月は雑煮と黒豆を食べる

正月三日は、雑煮と黒豆を食べるのが慣わしとなっている。雑煮の汁は、昆布と削り節でとっただしを醤油味としたものである。餅は角形で、焼かずに汁に入れて煮る。具に小松菜を加えるのが特徴である。正月料理の野菜は甘煮とする。

食のこぼれ話

トマトの原種は小粒であった

愛知県のブランド食材の中に、高糖度トマト「麗」がある。今のようにいろいろなフルーツが出回らなかった第二次大戦前後の時代には、トマトは野菜でなくフルーツの代わりに利用されることが多かった。砂糖が市場に少しずつ出回るようになると、トマトの酸味と青臭さの苦手な子どもたちは、トマトに砂糖をつけて食べたものである。誰が、今のようにトマトはソースや調味料に使うものと考えただろうか。トマトを料理のソースに使うようになったのはイタリア料理の普及によると思われる。