社長の呟き ≪はし休めー日本橋倶楽部会報より抜粋ー≫

日本橋倶楽部会報8月号(第468号)                                                            2018年7月22日

日本語には擬音語あるいは擬態語が他国語に比較すると多い。“ワンワン”、“ジュー ジュー”、“どーん”など英語では“Bow Wow”、 “Sizzle ”、“Kaboom”が該当するが、周囲が静かな時に聞こえる「しーん」を表現する擬音語は英語に見られない。オイフォン(Euphon)と呼ばれ、外界からではなく脳の中だけで聞きとれるこの音は内耳にある蝸牛の有毛細胞が自発振動することによって生じると言われているが、まだ科学的には詳しく検証されていない。無音時に待機している三半規管のアイドリング音のようなものと考えると何となく合点がいく。手塚治虫が漫画の中で初めて“しーん”と表現したと言う説もあるが、いにしえから「森々」「深々」などの表現が見られることから自然の中で研ぎ澄まされて来た日本人の鋭い感性が生み出した擬音と考えた方が正しいのだろう。七月の西日本集中豪雨は多くの犠牲者を山間部に出した。“どーん”という轟音に突然かき消されてしまったあの“しーん”とした“しじま”はいつになったら取り戻すことができるのだろうか。

日本橋倶楽部会報7月号(第467号)                             2018年6月21日

《6月18日の大阪北部地震により亡くなられたご遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々へお見舞い申し上げます。》

そろそろ夏の新蕎麦が出回る頃となる。一般的には新蕎麦は秋からと言われるが、農業技術の進歩による二毛作のおかげで、夏蕎麦は6月後半から信州などで収穫される。一方、国内産の半分近くを占める北海道産蕎麦は秋のみの一毛作。酷暑に新蕎麦の香り漂う冷たい“せいろ”が食べられるのはありがたい。“十六文”の 安さから二八(2×8)と呼ばれたという説もあるが、小麦粉二割、蕎麦粉八割の“二八そば”は腰のある細麺が打てる。昔、蝶ネクタイの日銀マンらしき老紳士が老舗“室町砂場”で焼鳥相手にお銚子一本、その後蕎麦をすすり、颯爽と席を立つ粋な姿を良く目にしたものだ。

「信州信濃の新ソバよりもわたしゃお前のそばがいい」酒の席ならではの都々逸だが、「しらふ」のことを英語では「ソバァ(sober)」と言う。呑兵衛の“野暮”そば好みはいつまでも席を立たない。

日本橋倶楽部会報6月号(第466号)                                                           2018年5月23日

南千住の鰻の名店「尾花」から浅草に向かうと泪橋から先は安い簡易宿泊所が多くあったため宿を逆に読んで“ドヤ”街と呼ばれた山谷だ。かつては毎夏のように交番が焼き討ちされる暴動がおきていたが、今はバックパッカーのインバウンドを多く見かける平和な街へと変貌した。いろは商店街入口を過ぎると、この界隈を舞台にした漫画「あしたのジョー」の連載が始まった1968年に開店した「カフェ・バッハ」のモダンな看板を発見する。鰻の後、違った香りに惹かれての係留も良い。戦後東京で本格的なコーヒーを出した店は銀座の「カフェ・ド・ランブル」が1948年と最も古いが、1962年オープンの吉祥寺「もか」が2007年に閉店してしまった後、続くのはこちらとなろう。2000年・沖縄サミットの晩餐会はこの店の「バッハ・ブレンド」で締めくくられたそうだ。ところで“音楽の父・バッハ”はコーヒー狂いの娘とそれをやめさせようとする父のユーモラスなやり取りの「コーヒー・カンタータ」を作曲している。“父の日”にはコーヒーの香りとバロック音楽が下町にも流れていそうだ。

日本橋倶楽部会報5月号(第465号)                             2018年4月18日

“ The Rest of the Story , Paul Harvey”

小欄も7年目となると、話のネタはどこから?ゴーストライターは誰なの?などの質問を拝受するようになった。浅学非才を婉曲に指摘されているだけなのだが、拙文にも興味を持って頂いているのかと前向きに考えるようにしている。ポール・ハーヴィーは1952年から2009年に90歳で亡くなる前年まで、冒頭の「ザ レスト オブ ストーリー」という4分弱のラジオ番組のキャストを務め続けた。FEN(極東放送)での特徴ある彼の声を憶えている方も多かろう。必ず“The Rest of the Story”に始まり、「Now you know The Rest of the Story」で閉じる。米軍放送のため若い米兵向けの解かりやすい内容でもあったし、ハリのある声も聞き取り易かった。この放送からは偉人の逸話、歴史、さらに米語の言い回しなど様々なことを学んだ。正直に告白すると、このスタイルが小欄の目標であり、ネタは日常でふと見つけるスパイスの効いた好奇心である。未完ながら、「これで、話の続きはお分かりですね!」

日本橋倶楽部会報4月号(第464号)                             2018年3月21日

三月に米国アカデミー・メイクアップ&ヘアスタイリング賞を辻一弘氏(48)が映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(原題Darkest Hour)」で受賞した。1996年の単身渡米から厳しい修行を積んだのであろう。日本人としては初めての快挙である。英国俳優ゲイリー・オールドマンもこの作品で初めて主演男優賞を射止めた。因みに受賞者にはオスカー像のみで賞金もなく栄誉だけだが、ノミニーには残念賞として相当な賞品が送られるようだ。

さて65歳で初めて首相になったチャーチルは米国とソ連を戦いに巻き込み、第二次世界大戦でドイツに勝利するが、その代償として後の大英帝国の失墜も招いた。米国大富豪の娘であったジェニーは英国公爵の三男と結婚してウィンストンを産む。美女で英国社交界を魅了した彼女は息子が大臣になるまで貢献する。彼女の考案との噂があるカクテルの女王「マンハッタン」のベースは北米産ウィスキー、息子の名を冠したカクテル「チャーチル」はスコッチである。

日本橋倶楽部会報3月号(第463号)                            2018年2月20日

東日本大震災以降は福島県・二本松市で開催されていた「なみえ町十日市祭」(浪江町・明治6年起源)が昨年11月、7年ぶりに町内で再開された。2017年4月より帰還困難区域を除き避難指示が解除された為だが、そのお祭りの後に「思い出の品 展示場」へ立ち寄ることができた。浪江町・棚塩のかつてのギフト店には県警一斉捜索時発見品が1万7千点並べられている。持主が行方不明のバッグには慌てて大切な物が詰め込まれたのだろうか?腕時計は身元確認に役立ったのだろうか?可愛い携帯電話にはどのようなメッセージが残されていたのだろうか?幸せに溢れるアルバムを見るのは辛い。名前が書いてある学童帽、体操着、学生服やセーラー服・・・。赤いランドセルの白い背当てにはミッキー・マウスの似顔絵と一緒に「6年間おつかれ!」と卒業間近のしっかりとした字体で書かれている。

北国の桜が芽吹く3月下旬、震災前は在校生558名を誇った今は二本松市にある浪江小学校のわずか2名の卒業式に参列する。

日本橋倶楽部会報1月号(第462号)                             2018年1月23日

御歳91歳のトニー・ベネットとレディー・ガガのヒット・アルバム「チーク・トゥ・チーク」が小欄の行きつけの店で繰り返し流されている。3年前のリリースだが、それらの中で「ザ レディ イズ ア トランプ(The Lady Is a Tramp)」には思わず苦笑させられた。「tramp」はトランポリンでお分かりの通り「ドシン、ドシンと足で踏みつける」が原義。転じて「浮浪者、あばずれ」などを意味し、この曲中の歌詞からは「気まぐれのじゃじゃ馬」を連想させるそうだ。たとえじゃじゃ馬であってもレディはいつでも可愛いが、「Trump is a tramp」となるとそうはいかない。トランプ大統領(Mr. President Trump)のトランプ(Trump)は日本で言うゲーム遊びのトランプ(英米ではcards)。「トランプは人々を踏みにじる暴れ馬」となる。今月はいよいよピョンチャン冬季五輪が開催されるが、北の指導者「ロケットマン」と競って狡猾なカードを駆使し、神聖なスポーツを踏みにじる足跡を遺さないよう願って止まない。

日本橋倶楽部会報1月号(第461号)                             2017年12月20日

オオカミと人類は共に数十万年前から群れを成し、狩猟をするという近い生活圏を持っていた。然るに人類がオオカミを飼い慣らし、友人となっていったことは頷ける。現在、犬種は700以上というが、平均寿命は12歳から15歳、室内で飼うようになり更に延びて、ギネス記録によると30歳近くまで生きたツワモノまでいるようだ。家族の一員になってから、いつのまにか飼い主の年齢を追い抜き、先に逝ってしまう愛おしい存在だが、もう一方の人間の友である猫は不思議なことに日本では干支にすら入っていない。諸説あるが、お釈迦様が危篤の時、ネズミに騙されてお見舞いが遅れてしまい、十二の干支に入れなかった。それ以来、その恨みの為ネズミを見ると追い回す習性になったと言われる。

小欄も過去マリー(メス)、ラッキー(メス)、太郎(オス)と看取ってきたが、今は元気な老犬フリーデン(オス)と残された寿命を”犬命”に競っている。

良き戌歳を迎えられるようお祈りしております!

 

 

文責:小堺化学工業㈱ 代表取締役 小堺裕一郎